技術情報

3次相互変調とチャネルプラン

相互変調

相互変調(intermodulation)は、受信時に必要な信号の中にスプリアス信号(不要波、相互変調)が受信機に発生する現象です。これは受信機に使用されている部品の非線形特性により起こります。ほとんどの相互変調信号はフィルタで除去する事ができますが、同一周波数帯域内に発生した相互変調信号は取り除くことができないため問題になります。
複数チャネルを使用する無線システムでは、相互変調信号が対象のチャネルに発生すると問題になります。つまり受信機はそのようなチャネルの信号を受信する事が難しくなります。したがって、このような干渉を防ぐにはチャネルプランを慎重に作成する必要があります。

相互変調はどの程度心配する必要があるか

同一エリア・同一周波数帯で、複数の送信機と受信機を同時に使用するアプリケーションの場合、この記事を参考に後段で説明する方法でチャネルプランを作成することをお勧めします。チャネルプランが必要な環境では使用可能なチャネル数は、無線機で用意されているチャネル数よりもはるかに少なくなります。言い換えますと、例えば無線機で40チャネルの設定が可能な場合でも数チャネルしか使用する事ができません。

2次相互変調

不要な信号の1つに高調波があります。これらの信号は2f、3f、4fのように基本波の整数倍で発生します。通常これらの信号は問題になることはありません。理由としてはこれらの高調波の振幅は周波数が上がるにつれて徐々に減少するからです。別の不要波としては2つの入力信号の周波数f1とf2の和と差があります(f1とf2は1次相互変調として知られています)。これらの2つの周波数が掛け合わさることでf1+f2およびf2-f1が発生します。周波数2f1、2f2、f1+f2およびf2-f1を2次相互変調と呼びます。

1次及び2次相互変調信号を表した図

3次相互変調

これまで1次及び2次相互変調信号について説明してきましたが、残念ながらそれだけではありません。2次相互変調信号の2f1と2f2は1次相互変調信号のf1とf2と掛け合わせると新しい信号が発生します。これらのうち2つは次の通りです。

・2f1 – f2

・2f2 – f1

これらは3次相互変調信号として知られています。2次積は入力周波数f1とf2(灰色エリア)の近くに現れ、フィルタで除去することができないため大きな問題になります。

赤色で3次相互変調を表した図

周波数f1とf2のチャネルを使用する場合、3次相互変調信号が生成される周波数は通信に使用できなくなります(これらの周波数チャネルでは実通信の信号に干渉を与えます)。例えば上の図でCH01とCH02の信号を入力した場合、CH00とCH03は使用する事ができません。

3次相互変調信号の確認

実際にスペクトラムアナライザで発生する3次相互変調を確認する事ができます。下図はスペクトラムアナライザでオーディオ送信モジュールWA-TX-03Sによって送信した863.2500MHzと863.3750MHz(真ん中)の2つの入力チャネルを受信しています。

スペクトラムアナライザにWA-TX-03Sの2つの信号を入力した時に生成された3次相互変調

863.1250MHzおよび863.5000MHz付近に2つの信号(3次相互変調)が新たに発生していることが確認できます。発生した2つの信号により隣接する2つのチャネルが使用できません。

3次相互変調の問題を回避するための計算ツール

当社のページにてどこに3次相互変調が発生するかを計算できるツールを提供しています。このツールを使用すると、計算上使用できるチャネルとできないチャネルを表示することができます。

URL: https://www.circuitdesign.jp/technical/channel-planning/

チャネルプランの作成

使用する周波数帯などの選択後、任意でいくつかのチャネルを選択します。選択すると周波数部分に色が付きます。緑色は選択したチャネル(利用可)、黄色はチャネルの選択により使用できなくなったチャネル(選択禁止)、赤色は選択したチャネルで3次相互変調が発生するチャネル(エラー)を示します。

詳しくは計算ツールの下部に記載されている説明をご覧下さい。

まとめ

3次相互変調のポイントは以下の通りです。

  1. 同一エリアで複数のチャネルを同時に使用する場合、3次相互変調を考慮しなければなりません。
  2. 使用するユーザーはチャネルを自由に選択することはできません。
  3. 無線機器で用意された全ての周波数が使用できるわけではありません。実際に使用できる周波数チャネルは無線機器で用意されている(設定できる)チャネル数よりかなり少なくなります。たとえばツールを使用して2.4 GHzのトランシーバーモジュールSTD-503のチャネルプランを作成した場合、全77チャネルのうち、9チャネル程度しか使用できなくなります。

2.4GHzトランシーバー無線モジュール STD-503のチャネルプランを作成した場合の例

ただし、あくまでもこの計算ツールは3次相互変調を完全に回避するための最悪の状態をシミュレーションしています。送信機と受信機の位置関係が適切に離れているような場合は3次相互変調の影響は無視できます。たとえば、近距離に複数の送信機がある環境を避けることにより干渉を防ぐことができます。またシステム間のチャネル間隔をできるだけ大きくすることをお勧めします。チャネル間隔を大きくすることにより使用周波数帯域外にスプリアス(相互変調信号)を移動させることができます。


※ この記事は当社英語サイトの記事を元に作成しています。オリジナルはこちらに掲載されています。