技術情報

電波とは

電波は電磁波の一種です。電磁波は以下のようにして発生します。

1.電流が流れることにより磁界が発生(右手の法則)。
2.磁界の変化を妨げる方向に電界が発生。
3.電界の変化を妨げる方向に磁界が発生。
4.2、3を交互に繰り返し電界と磁界を発生。

上記のように磁界と電界が交互に発生しながら伝達していきます。

電波の放射を考えやすいようにするため、ここではアンテナのゲインや放射パターンがない等方性アンテナ(アイソトロピックアンテナ)を用いて説明します。等方性アンテナは四方八方(三次元)に均等な放射パターンを持つ0[dBi]の理論上のアンテナです。

電波はアンテナから放射状に広がっていきます。アンテナからr[m]離れた位置の単位エリアのエネルギーをEとした場合、2倍離れた2r[m]では面積が4倍となりますので単位エリアのエネルギーは1/4Eとなります。同様に3倍離れた3r[m]ではエネルギーは1/9Eとなります。

エネルギーは距離の2乗で減衰します。

波長と速さ

電波は電磁波の一種なので、速度は光と同じ 1[秒]間に30万[km]進みます。

電波の波長 λ (ラムダ)は電波1周期の長さになります。
波長 λ[m]は電波の周波数をf[Hz]、真空中の電波の速度を C[m]とすると以下のようになります。

$$λ [m] = \frac{C [m]}{f [Hz]}$$

上記式に 30万[km/s]を当てはめると

$$λ [m] = \frac{ 300,000,000 [m]}{f [Hz]}$$

になります。

目安として300[MHz]は1[m]と覚えておくと簡単に波長が求められます。例えば150[MHz]であれば 300 [MHz]の半分の周波数なので2倍の2 [m]という感じで大体の長さを計算できます。

代表的な波長 λ:
429[MHz] → 70[cm]
150[MHz] → 2[m]
2.4[GHz] → 12.5[cm]

波長 λ は主にアンテナの設置を考える場合に重要な数字となりますので、ご使用になる周波数の波長は覚えておくと便利です。

電波伝搬とは、電波が空中を伝わることを言います。電波は送信アンテナから四方八方へ放射状に広がっていきますが、アンテナや通信環境によって広がり方が異なります。

ここでは説明しやすいように自由空間モデルと平面大地がある2波モデルについて記載します。

自由空間モデル

自由空間モデルは何もない仮想空間のことを言います。直接波のみで反射が発生しないため、受信電力は電波の放射で述べたように距離の2乗で減衰します。

また受信電力は周波数の2乗に比例(波長λの2乗に反比例)して減衰します。

条件
周波数:429[MHz] 送信電力:10[mW]
アンテナゲイン:2.14[dBi]

2波モデル

全反射する平面大地がある空間のことを言います。受信点では直接波と大地反射波の2波が到来し互いに干渉します。直接波と大地反射波が逆位相となる点では互いに打ち消し合い受信電力は小さく(デッドポイント)なります。受信電力が落ち込むポイントは数メートルの近傍で多く発生します。落ち込む点を避けるため、場所を移動させて受信電力の大きいところに設置する必要があります。周波数が高い(波長が短い)ほど近距離で受信電力の落ち込みが発生しやすくなります。

条件
周波数:429[MHz] 送信電力:10[mW]
アンテナゲイン:2.14[dBi]  アンテナ高:2[m]

いずれのモデルも当社の無線技術計算ツールを利用してシミュレーションをすることが可能です。実際は大地からの反射以外に建物の反射や障害物などによる影響があるため条件が複雑になりますが、ツールを利用すると通信距離の目安を知ることができます。

計算に使用している数式については計算ツール後半に書かれている記述をご参照ください。

電波伝搬特性(自由空間&2波モデル)計算ツール

送信機から送信された電波は図のように様々な経路で受信機に到達します。受信機ではこれらの到達する合成された電波を受信しますので、経路や距離の違いにより受信電界強度が変わります。このことをマルチパスフェージングといいます。

マルチパスは電波がさまざまな経路で受信機に到達することを意味し、アンテナで受信された総電波は干渉を受け、大きく変動することがあります。信号の位相が合っている場合、電界強度は高くなり、位相がずれると、信号は互いに打ち消し合うため弱くなります。マイクロ波のような高い周波数は特に波長が短いため、マルチパスの影響を受けやすいです。

フェージングには以下のようなものがあります。

主なフェージング要因

環境ノイズ自然環境からのノイズは、電車や自動車のエンジン、送電線や産業プラントなどの産業用機器、および民生機器から発生します。さらに、家庭の電子レンジや蛍光灯からノイズが発生します。電源スイッチを操作したときにも電波ノイズが発生します。
自然ノイズ大気ノイズや太陽フレアによる地球上の電波障害、宇宙ノイズや地殻の動きなどの自然現象による電磁ノイズがあります。
他の無線機器主に同じ周波数または近い周波数を使用する無線機器から干渉を受けます。 2値FSKのような狭帯域無線機器は、同じエリアで同じ周波数で送信できる機器は1つに限られます。
自機意外と見落としがちですが、自機内の電源・CPU・液晶表示器などから発生するノイズにより影響を受けます。
伝達経路送信機と受信機間の経路は、山や建物・壁・車・人など複数の障害物の影響を受けます。例えば建物だけでも直接届く直接波、反射による反射波、建物の影を迂回する回折波、壁やガラスを通過する透過波などがあります。これらの電波は直接波より長い経路を通るため、異なる位相で受信機に到達します。これらの信号の合成波により受信信号レベルは強くなったり弱くなったりするため、通信エラーが発生します。

電波を送信してから受信するまでには様々な伝送損失が発生します。伝送損失には以下のようなものがあります。

主な伝送損失

伝達経路送信機のアンテナから受信機のアンテナまでの伝送損失です。前記した電波伝搬やフェージングによる損失です。周波数が高くなるまたは距離が離れるほど損失は大きくなります。
マッチング無線機(送信機・受信機)とアンテナ間のインピーダンス不整合による損失です。無線機とアンテナ間のマッチングを調整することにより改善します。
ケーブル無線機・アンテナ間のケーブル損失です。1[m]あたりの損失はわずかですが、1[m]あたりのケーブル損失が0.1[dB]だったとしても、100[m]にした場合、10[dB]の損失(1/10に減衰)されてしまいます。周波数が高い場合も損失が大きくなるので注意が必要です。ケーブルを太くしたり低損失の物を使用すると損失が小さくなります。またケーブルには50[Ω]・75[Ω]等、抵抗値が異なるものもありますので正しい抵抗値のケーブルを使用して下さい。
コネクタコネクタ部分でもわずかながら損失が発生します。ケーブル同様に周波数が高いほど損失は大きくなります。異なるコネクタ間の変換する場合、変換コネクタを複数組み合わせて使用するのではなく、1つのコネクタで変換することをお勧めします。
アンテナアンテナゲインも伝達経路同様に受信電力に影響します。2.14[dBi]のダイポールアンテナを基準に考えた場合、短縮アンテナなどゲインの低いアンテナを使用すれば受信電力もその分だけ小さくなります。送信についても同様にアンテナゲイン分小さくなります。

受信電力を計算する場合、効率[%]を使うよりもデシベル[dB]を使った方が簡単に計算できます。%の場合はかけ算での計算になりますが、デシベルの場合は足し算・引き算で求めることができます。

受信電力 = 送信電力 + 送信機損失 + 送信機アンテナゲイン + 伝達経路損失 + 受信機アンテナゲイン + 受信機損失

送信・受信機損失 = ケーブル損失 + コネクタ損失 + マッチング損失