技術情報

アンテナ

代表的なアンテナとして以下のようなものがあります。

ダイポール

ダイポールアンテナは波長の1/2λの長さのアンテナで、垂直に設置した時に水平全方向に電波の送受信ができます。このようなアンテナは半波長ダイポールアンテナと呼びます。ホイップアンテナに比べ、1つのエレメントがGNDで代用していないため安定した性能が得られます。

ホイップ ホイップアンテナは波長の1/4λの長さで垂直に設置した時に水平全方向に電波の送受信ができるアンテナです。比較的設置が簡単なため、携帯電話や小型ラジオ、無線ユニットの汎用アンテナとして幅広く使われています。ダイポールアンテナの半分の長さですみますが、エレメントの片方をGNDで代用しているため、接地状況によりアンテナゲインが下がるデメリットもあります。
八木・宇田 八木・宇田アンテナは3本以上の複数のエレメント(素子)があるアンテナで、指向性が高くホイップ・ダイポールアンテナに比べ高ゲインなのが特徴です。主にテレビアンテナなどに使用されています。
パラボラ パラボラアンテナは主に衛星通信の送受信に使用されています。指向性が強く、細かな方向調整が必要ですが、ゲインが高いため遠距離の通信が可能です。
ループ ループアンテナは電波の磁界の変化をキャッチします。ホイップアンテナなどに比べて小さくできるのが特徴です。アンテナを電波の磁界がループを横切るように設置します。
誘電体 誘電体アンテナは高周波用誘電体セラミックを使用したアンテナで小型化・高機能化することができます。

アンテナにはタイプによりそれぞれ指向性があります。

 

ホイップアンテナは地面に対し垂直に設置した場合、左図のように電波がどの方向にも均等に放射されます。このようなアンテナを無指向性アンテナと呼びます。

アンテナを水平に設置した時は8の字型に放射されます。

ダイポールアンテナはホイップアンテナの接地部分をポールに置き換えて動作させているので放射パターンは同じようになります。

 

八木・宇田アンテナやパラボラアンテナは特定方向に電波が放射されます。このようなアンテナを指向性アンテナといいます。強い指向性があり、特定方向のみに限定できるため、1:1で効率よく不要な電波の受・発信をやりとりしたい場合に有効です。ただし高ゲインのため、特定小電力無線のようにあらかじめアンテナが指定されている機器には使用できません(受信専用機であれば使用可)。

ホイップアンテナなどのアンテナの基本は半波長ダイポールアンテナです。ダイポールアンテナを使って説明します。

アンテナは使用する波長λ(周波数)によってその大きさ(長さ)が決まります。

  

例えば429[MHz]の場合、波長λは約70[cm]で半波長ダイポールアンテナの長さは波長λの半分の約35[cm]になります。左図のように給電点からλ/4ずつの長さ(約17[cm])にした時に、送信の場合はアンテナと送信電波が共振して最大電力を放射し、受信の場合は受信電波とアンテナが共振して最大電力を受けることができます。アンテナを短くしたり曲げたりした場合、共振する周波数がずれてしまうため十分な性能を発揮できなくなります。

アンテナに発生する電流はアンテナ端で最小となり、真ん中の給電点で最大となります。逆に電圧はアンテナ端で最大、給電点で最小となります。そのため、特にアンテナ端はできる限り金属物を避ける必要があります。

最近はアンテナを小型化するためにホイップアンテナのようなモノポールアンテナがよく使用されています。

原理はダイポールアンテナと同じですが、ダイポールアンテナの片側を大地(GND)に接地してイメージとして使用しています。そのためダイポールアンテナの約半分の長さλ/4にすることができます。大地との設置が一番良い状態の時にダイポールアンテナと同じような特性を得ることができます。大地の代わりに金属ケースなどを代用することもできます。アンテナをコンパクトにできる反面、GNDの状態が十分でないとアンテナの性能が十分に発揮できない点は注意が必要です。

大地に対し垂直に立てたアンテナから放射される電波は地面に対し垂直に伝搬します。これを垂直偏波(垂直波)と呼びます。同様に水平にしたアンテナは電界が地面に対し水平になります。これを水平偏波(水平波)と呼びます。衛星放送などでは円偏波も使用されています。

アンテナを設置する場合、お互いのアンテナの偏波を合わせないと損失が発生しますので、偏波を合わせる必要があります。

無線機器とアンテナを接続する時、単純に線でつなげば良いというわけではありません。電力を効率的に伝達させ、電波の反射が発生しないようにする必要があります。無線機器・アンテナ・ケーブルにはそれぞれ公称インピーダンスがあり、同じ値のものを使用しなければなりません。異なるインピーダンスのものを接続した場合、インピーダンスの不整合が発生し効率よく電力を伝えることができません。またモノポール(ホイップ)アンテナのように接地状態に依存するアンテナは接地を十分に取る必要があります。

お互いのインピーダンスを調整することをインピーダンス整合またはインピーダンスマッチングといいます。

一般的にインピーダンスは無線は50[Ω]、テレビは75[Ω]、オーディオは600[Ω]を使用しています。高周波におけるインピーダンスは直流の電気抵抗(レジスタンス)だけでなくリアクタンスが加わるため実数部と虚数部を持ちます。また周波数によりインピーダンスは変化します。直流回路のように電気テスターでは測ることができません。ネットワークアナライザなどを用いて測定する必要があります。

インピーダンスが不整合になると反射が発生します。反射は信号源(無線機器)からアンテナ方向に送信した信号の一部が信号源に戻ることをいいます。信号源からアンテナへ向かう信号を進行波といい、アンテナから信号源に戻る信号を反射波といいます。反射波が大きくなると進行波と合成した信号に悪影響を与えます。大きな送信電力の場合、反射波により部品を破壊する可能性がありますので注意して下さい。

不整合が起きた場合、上記のように進行波と反射波が発生し、お互いに逆方向に伝搬しながら足し合わさったり打ち消し合ったりします。進行波と反射波を合成した波形を定在波といいます。

この定在波の最大の振幅と最小の振幅の比率を定在波比といい、特に電圧については電圧定在波比といいます。

電圧定在波比はVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)と略称で呼ばれ、無線機器からアンテナまでの伝達効率を示す値として広く使われています。SWRと記載されている場合もあります。VSWRについての技術的な説明については割愛しますが、VSWRは1が最小で無限大が最大です。値が1に近づくほどインピーダンス整合が良い事を示します。VSWRはSWR・VSWR計を用いて測定することができます。さらに正確に測定する場合はネットワークアナライザを使います。

主なVSWRと効率については以下の通りです。

VSWR 効率[%] 損失[%]
1.0 100.0 0.0
1.2 99.2 0.8
1.5 96.0 4.0
1.8 91.8 8.2
2 88.9 11.1
2.5 81.6 18.4
3 75.0 25.0
4 64.0 36.0
5 55.6 44.4

たとえばVSWRが3の場合、効率が75[%]、損失が25[%]となります。10[mW]の電力で送信した場合、7.5[mW]がアンテナから放射され、残り2.5[mW]はインピーダンス不整合により損失したことになります。

VSWRが2.0以下であれば90[%]以上の効率で伝送できていることになりますので、2.0以下が目安になると思います。

ダイポールアンテナの原理でも少し触れましたが、アンテナにはホイップアンテナのような接地が必要なアンテナとダイポールアンテナのような接地不要のアンテナがあります。前者を接地型アンテナ、後者をノンラジアルアンテナといいます。

ホイップアンテナのような接地型アンテナは平面大地または大きな地板と接地する事を前提に設計されていますので、接地が十分でない場合アンテナインピーダンスが公称値と異なりインピーダンス不整合になり損失を生じます。接地状態によりVSWRが3以上(25%以上損失)になる場合もあります。その場合、VSWR計などを使い接地が最適になるように調整する必要があります。

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[ VSWRチェッカー製品情報 ]

アンテナのためのスペースが十分に確保できる場合やアンテナ性能が重要な場合は、接地状態に依存しないダイポールアンテナ・ブラウンアンテナ(GPアンテナ)のようなノンラジアルアンテナを使用されることをお勧めします。特定小電力機器の場合、メーカーからあらかじめ指定されたアンテナを使用する必要がありますが、あらかじめメーカーが複数のアンテナを指定している場合もあります。不明な場合はメーカーに問い合わせするのも良いと思います。

なお受信専用の無線機器は八木アンテナのような高ゲインの指向性アンテナやノンラジアルアンテナを使用することが可能です。