技術情報

無線機器の開発

無線モジュール・機器の開発

有線でつながった機器を無線化しようとした場合、一から自分で設計・開発しようとするとまずは高周波回路やアンテナなど無線設計について知識を得ないといけません。もし無線機器に関する知識が十分であったとしても、機器を一から開発しようとすると数ヶ月から1年の開発期間が必要になるかもしれません。また無線性能を確認するにはスペクトラムアナライザや変復調信号を解析するような高価な計測器も必要になります。

無線部分の開発に必要なこと

無線機器を開発する場合に必要なことを、ざっと思いつく範囲で書き出してみました。

仕様検討無線する機器について動作や機能を明確にし製品仕様に落とし込みます。通信頻度やデータ量、通信距離により使用できる周波数帯が異なるため、必要事項を整理しどの周波数帯を使用するかを決めます。
部品・構成検討仕様に合わせて機器の構成や使用する部品を選定します。最近ではRFIC(ワンチップ無線IC)を使用した機器も多くあります。また部品は高周波用のものを使用する必要があります。
回路図設計無線部の回路設計をします。使用する周波数帯に合わせ無線規格を満たすように回路を構成しないといけません。RFICを使用した場合、部品の低減はできますが、それでも周辺マッチング回路や外付けフィルタなどが必要になります。
基板アートワーク高周波回路の場合、同じ部品を使っても基板レイアウトにより無線性能が大きく変わります。十分な性能を出すには的確なアートワークが必要です。
通信プロトコル機器同士をつないでいる有線と違い無線は空間に電波を送信・受信するため、あらかじめ無線間で伝送するデータのフォーマットを決めておく必要があります。また相手との通信を確実にするため、識別IDやプリアンブル信号(機器間の同期信号)、エラーチェックも必要になります。通信プロトコルの善し悪しは通信品質に大きく影響します。
ファームウェア無線部やRFICの制御、実際に機器間で行う無線通信の制御、周辺機器とやりとりを行うファームウェアの開発が必要です。キャリアセンスや時間制限など、無線規格に合致した制御を行うようにしなければなりません。無線通信のため、通信ができなかった場合の処理などもあらかじめ決め、無線通信ができない場合でも安全に動作するようにしなければなりません。
アンテナアンテナは安定した通信をするために重要な要素です。できる限り理想的な状態で設置したいところです。
無線部マッチング部品配置やアンテナの状態により無線部のマッチングが必要になります。せっかくアンテナや性能の良い部品を使用してもマッチングが良くないと伝送ロスとなり効率よく通信ができません。
無線性能確認無線性能が十分にできているか確認を行う必要があります。また量産したときに部品等のバラツキにより不具合が発生しないかなど十分に検証する必要があります。
周辺インターフェース無線部につながる周辺機器との接続をどのようにするか検討する必要があります。無線と周辺機器とをどこで切り分けるか、無線状態が悪くて通信できなかった場合にどのように処理するかなど決める必要があります。
技術基準適合証明・工事設計認証
(技適マーク)
無線性能が法令に適していてもそのまま使用できるわけではありません。無線機器として日本国内であれば技適マークを取得する必要があります。使用する無線によっては資格や登録・免許が必要な場合もあります。

無線はアナログ的な要素を多いため、十分な性能を発揮する機器を作るには熟練や経験が必要といわれています。それゆえに一から設計するのは非常に大変です。

また技術的な要素以外に、市場性や競合他社などの情報を収集する必要があります。近年は特許等についても調査を行う必要があります。

最終製品にする場合、筐体やインターフェースなど表示部、さらに無線以外の規格等、製品として満たさないといけない条件に対応する必要があります。

 

ざっとではありますが、無線開発に必要な項目を挙げてみました。

コストとの兼ね合いもありますが、数量が少ない場合は無線モジュール等を活用したほうが開発コスト・期間ともに少なくすることが可能です。逆に数量が多い場合は専用設計にしたほうがトータルのコストは下がります。